染色家・田中紀子さん【後編】

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歴史文化

初回投稿日:2014.12.12
 最終更新日:2024.03.27

染色家・田中紀子さん【後編】

前回はどんな風にモチーフがうまれるかのお話でした。

後編は、沖縄の光と影の話からスタートです。


 

モチーフは、心を動かされたものからうまれるという話でしたが、

表現するうえで大切にされていることはありますか?

 

「私は沖縄の光と影がすごく好きなんです。

南国ならではの強い光は、生命力にあふれていて

その光に照らされた花や葉は力強い色合いになりますよね」

 

力強い光だから、明るく鮮やかに映る……

あまり意識したことがありませんでした。

 

「そして強い光は、影のシルエットもくっきり出してくれます」

 

確かに光が強いとなると、影もはっきりしているかもしれません。

 

「沖縄に来てはじめて、影ってこんなに美しいものなんだなって感じたんですよ。

それはやっぱり力強い光があるからだと思うんです。

内地だとこんなにくっきり映らないんじゃないかって」

 

「影の美しさ」なんて、気づきもしませんでした……

それをモチーフに反映されているんでしょうか?

 

「そうですね。南国の光に照らされた

明るく輝く色合いを表現したいと思っていますし、

くっきりとした影のシルエットも出したいので、

すっとした力強いラインが出るように心がけています」


 

光にしても影にしても沖縄には力強さがある。

田中さん、力強いものがお好きなんですね

 

「そうですね(笑)。好きでよく染める植物が

月桃とハスなんですが、これもやっぱり力強さに惹かれているのかも」


月桃の額絵

 

「月桃って鋭角にしゅーっと伸びた葉に

ぼんぼりみたいな花がついて、すごくきれいですよね。

でもほら、儚いわけじゃない。

葉っぱもわさわさ茂るし、どっしりとして力強い」

 

確かに花は可愛いですけれど、堂々としている感じがあります。


ハスの額絵

 

「ハスもしゅーっと茎が伸びているのに

花にはボリュームがある。葉っぱも大きくて存在感がある」

 

やっぱり力強い!

 

「ですね(笑)」


 

田中さんといえば、動物のモチーフも素敵ですよね。

このゾウのがま口なんて、titutiで見た瞬間にメロメロでした。

一緒だった3歳の息子がほしい!って即座にくいついて(笑)

 

「これは姪っ子にプレゼントしたいから

子ども用の財布を作ってと言われてうまれたもの。

ゾウが好きだからゾウでお願いしますって(笑)

『こどもの国』のゾウを参考にしたんですよ」

 

優しくて、ちょっと眠たげな目が何ともいえなくて。

それに、前のゾウのしっぽを

鼻でつかんでいるところがたまりません。

 

「小学校の時に読んだ本のお話がモチーフなんです。

ゾウを移動させる時に、鼻で前のゾウのしっぽをつかんで

みんなでゾロゾロ動くっていうね、その場面を読んだときに

私のなかで、わぁってイメージがふくらんで。

それを思い出して染めました」

 

夢がありますね。見ているだけでニマニマしちゃいます、このゾウは。

 

「嬉しいです。手にして下さった方が

楽しく幸せな気分になるようにと心がけているので」


マース袋

 

ところで、田中さんは「紅型工房 染虫」として

ご主人と二人で活動されていますよね。

 

「基本的にデザインと染めは私なんですよ。

主人は主に染めたものをガマグチにしたり、

マース袋にしたりと、加工をしています。

最近は、マース袋のワンポイントになる

小さなトンボ玉も作ってくれるようになりました」

 

まさに二人三脚ですね。

 

「器用な主人に助けられています(笑)」

 

二人の手からうまれるものにますます期待が高まります。

またお店のドアを開けるのが楽しみになりました!


 

沖縄ならではの光と影を表現している田中さん。

おはなしを聞いて以来、たとえ身近な風景でも

これまであまり意識しなかった

力強い光に照らされた自然の色や、

くっきりとした影のシルエットに目を向けるようになりました。

 

沖縄の美しさは日常のあちこちに潜んでいる。

そう田中さんに教えてもらった気がします。

 

 

モチーフがうまれるまでを紹介した「前編」はこちら

 

 

◆田中紀子(紅型工房 染虫・びんがたこうぼう そめむし)

http://somemushi.com/index.html

 

○購入できる店

tituti OKINAWAN CRAFT

http://www.tituti.net/contact.html

 

琉球民芸センター

http://rm-c.co.jp/

 

ミュージアム球陽/ショップ紅型

http://oki-park.jp/shurijo/guide/59/158

 

西森美術(ニシムイビジュツ)

www.nisimuibijutu.com/

 

 

沖縄CLIP編集部

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