先人たちの農地を芋で復活《赤嶺農園》

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歴史文化

放送日:2024.02.19 ~2024.02.23

初回投稿日:2024.03.02
 最終更新日:2024.03.27

先人たちの農地を芋で復活《赤嶺農園》

昔から農業が盛んな糸満市の照屋地区にある赤嶺農園。栽培担当の赤嶺恭徳(たかのり)さんは、50年間、紅芋やサトウキビを作りながら、先祖代々の土地を守ってきた祖父、赤嶺勝彦さんの農地を受け継ぎ、「先人たちの農地を活かす」をミッションに掲げて、兄や父、親族一同とともに、さつまいもの栽培に取り組んでいます。

さつまいも

形は揃いませんが、一年目でもたくさんのさつまいもが収穫できました

沖縄独特の甘さを追求して

高齢のため足腰が弱り、雑草を抜くこともできなくなって寂しそうな勝彦さんを見た恭徳さん兄弟が、「祖父の農地を引き継ごう」と決意しました。勝彦さんは昔、さつまいもから農業を始めたと聞いていたので、沖縄の土と気候を生かして、さつまいもの紅はるかを栽培することにしました。農業を始めて一年目。勝彦さんのように形はそろいませんが、味で勝負と、まずは沖縄独特の甘さを追求していくそうです。

農作業の様子
農業が大変じゃないとわかれば、農業を始める若者が増えるかも。恭徳さんの願いです

オリジナルの機械づくり

芋の収穫は重労働。収穫の手間を軽くしようと、借金をしてでも大手メーカーの機械を買うかどうか悩んだという恭徳さん。勝彦さんに相談すると、「沖縄の硬いジャーガルの土壌には、市販の機械は刃が立たない。自分たちの手で作りなさい」とアドバイスされました。

 

設計に詳しい父や溶接職人と試行錯誤を重ね、足腰に負担がかからないように、座りながら収穫ができて、タイヤ部分がソリのように滑る「ソリ号」が完成。ソリ号によって短時間で多くの収穫が可能になりました。今後も恭徳さんは、父や溶接職人たちと力を合わせて、効率の良い道具を増やしていきたいと考えています。

恭徳さん
収穫した芋を検品する恭徳さん

形を均一にする難しさ

南部の糸満の土壌はジャーガルという硬い土なので、土の中で芋が変形してしまい、形をきれいに揃えるのはとても難しいこと。まだまだ均一な形ではありませんが、植え付け後に雑草を生やさないように管理して、芋に栄養が行きわたりやすいようにしたり、お客さんの要望に応じたサイズに合わせて、収穫を遅めたり早めたりすることができるようになったそうです。

雑草
沖縄の環境では、きれいに整えてもすぐに雑草が生えてしまいます

耕作放棄地・荒廃農地をなくしたい

荒れていく畑を悲しむ勝彦さんの落胆を身近で見ていた恭徳さん。時間が許す限り、親戚たちと雑草を刈りに行きます。荒れた農地にはテレビや家具、おもちゃなどが散乱していて、ゴミ捨て場になっていました。恭徳さんたちは、「耕作放棄地や荒廃農地を農地によみがえらせたい。地道に開墾していきます」と、強い決意を見せてくれました。

 

一度荒れてしまった土地でも開墾すれば、きちんとさつまいもは育つことがわかっています。今後は、周辺の農家とも連携しながら、耕作放棄地や荒廃農地を少しでもなくしていけたらと恭徳さんは話します。

こども
この子たちに「農業は楽しい」と思ってもらうのが大人たちの願い

一生の思い出になる芋掘り大会

恭徳さんの子どものころの幸せな思い出には、勝彦さんの畑で、兄弟や従兄弟たちと芋を掘ったり、落とし穴を作ったり、皆でワイワイ遊んだ記憶が一番に思い浮かぶそう。

勝彦さんは、近所の学校の子どもたちの芋掘り体験も受け入れています。今日は近くの保育園児たちの芋掘り体験です。

祖父の勝彦さん
祖父の勝彦さんの姿を見た、親戚一同のうれしい涙がありました
 

現在、入院中の勝彦さんも一時外出をして、みんなに会いに来ました。約半年以上ぶりの再会に親戚や勝彦さんの友人たち、一同が思わず涙ぐむシーンも。

 

恭徳さんは「硬い土の中から自分で芋を引き上げる手応え、達成感を通して、農業の楽しさを子どもたちにもっと伝えたい」と話します。

 

また、赤嶺農園では、就労支援企業と連携した取り組みも行っており、障がいのある人でも作業ができる仕組みを作り、ユニバーサル農業を目指しています。

芋
極めが細かく蜜が多い「紅はるか」は、焼き芋が絶品 

 

現在は、石焼き芋屋さんやキッチンカーなどに「紅はるか」を提供して使ってもらい、そのおいしさを広めている途中です。一度食べたら独特の甘さがあると大好評。

 

「農地をどのように展開、活用していくのか、芋の力で新たな価値を生み出し、持続可能な農業を実現したい。私たちにとっては大きな挑戦であり、地域の希望であるように行動していきたい」。それが、恭徳さんの願いです。

こども
将来、この子たちの幸せな記憶の中に今日という日がありますように

芋の赤嶺農園

住所 /
糸満市字照屋390-2
インスタグラム /
https://www.instagram.com/imonoakaminenoen/

沖縄CLIP編集部

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