海と人と琉球ガラス《硝子屋swell》

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歴史文化

放送日:2023.12.11 ~2023.12.15

初回投稿日:2024.01.08
 最終更新日:2024.03.27

海と人と琉球ガラス《硝子屋swell》

琉球ガラスが導いた沖縄の暮らし

名護市の美しい海の近くに佇む、小さな工房。開け放たれた扉から中を覗くと、琉球ガラス作家、與古田すみれさんが、赤々と燃える炎を前に吹きガラスの製作に取り組んでいました。出身は、大阪。2015年の春、高校を卒業してすぐ沖縄へ移住し、読谷村のガラス工房で3年半修行を積みました。小さな頃から、夏休みといえば、家族両行で沖縄の離島へ出かけていたという與古田さん。海が大好き、そして楽しい思い出のある沖縄に住んでみたいなと考える中、移住まで導いてくれたのは、ほかでもない琉球ガラスの存在でした。

 ガラス制作

「自分が本当にやりたいことは何だろう?って卒業後の進路に悩んでいたんです。そんなとき、実家の食器棚に、沖縄旅行のお土産の琉球ガラスを見つけて。もともと図工やものづくりが好きだったし、吹きガラスっていいなと思って、沖縄に住んで琉球ガラスを作る仕事に挑戦してみようと」

読谷村の工房を独立後は、結婚・出産。現在は、ご主人の出身地であるうるま市に移り住み、海の近くで家族3人の暮らしを楽しんでいます。

「娘が生まれた後に始めた乳幼児睡眠コンサルタントの仕事と、夫が経営する精肉店の手伝いと、なかなか毎日ガラスを作り続ける時間が持てなかったんですが、限られた時間の中でも、ものづくりを続けていきたい。そう思って、知り合いの作家さんの工房をお借りして琉球ガラスづくりに取り組んでいます」
 

沖縄の海を表現した心安らぐガラス

独立後は「海好きによる海好きのための琉球ガラス」をテーマにオリジナルの琉球ガラスをスタート。屋号は、「硝子屋swell」。泳いだり、シュノーケルしたり、サーフィンをしたり、沖縄の海で過ごすうちに「波」を意識するようになり、英語で調べたときに出てきたのが「swell」だったそうです。

きれいな海を背景に並べた琉球ガラス
 
海の模様や、海の表情が伝わってくる與古田さんの琉球ガラス。作品には、「みなも一輪」や「波の綾」など、素敵な名前がつけられています。「これは、キラキラと輝く海の水面みたい」「こっちはクラゲに見える」。そんなふうに思いついた名前をつけていくのだそう。最近は、作品を見たお客さんが「心が安らぐ、癒される」と言ってくださることが嬉しくて、コンセプトを「心安らぐガラス」と変更。眺めるだけで、日常にほっと一息。沖縄の海を表現した與古田さんのガラスが、心安らぐ時間をもたらしてくれます。

砂浜に並べられた琉球ガラスの作品

伝統工芸の魅力を伝えたい

小さな頃からものづくりが好きで、琉球ガラスの作り手になることを目指して、沖縄へ移住した與古田すみれさん。「自分が本当にやりたいことは何だろう?」と悩んだ答えが沖縄にあったという実感、自分の生きがい、やりがいを見つけられたことは、大きな喜びだったと言います。

琉球ガラスのグラス

海の色、波のかたち。日々の暮らしで感動したことを自身のオリジナル作品として形に残せる幸せ。そんなものづくりを通して、自分に自信を持てるようになり、自分の世界が広がっていくのを感じているそうです。

吹きガラスの作業

「目指しているのは、自分がワクワクするもの、人が喜んでくれるもの、両方を兼ね備えたのガラスづくり。沖縄に住んで、伝統工芸の素晴らしさに深く触れることができ、もっともっと知って学びたいと考える日々です。私も、作り手のひとりとして、たくさんの人にその魅力を伝えていきたいです」
 

親子で楽しむ海の時間

家族みんなと海で遊ぶのが楽しくて、休みの日にはよく海へ出かけていると楽しそうに話す與古田さん。実は、出産直後は上手にリフレッシュできず、悩みを抱えていたそう。私のように悩んでいる人がいるかもしれない。そこで立ち上げたのが、お母さん同士の交流の場「ゆんたく会」です。

 ビーチで海を眺める親子

「娘の夜泣きで悩んでいた頃があって、そのときに乳幼児睡眠コンサルタントの本と出会い助けられたので、自分も誰かの支えになりたいと、コンサルタントの仕事を始めました。一人で悩んでいるお母さんって多いと思うんです。私も、正直しんどい時期があったので、同じ境遇で頑張っている同士のお母さんが集まる場所を作りたいと『ゆんたく会』を作りました」

 ビーチで遊ぶ親子

最初はカフェで集まっていたけれど、小さい子供がいながら座り続けるは至難の業。そこで、場所をビーチに変更。子どもたちに目の届く場所で「自由に遊んでおいで」と言える自然の中で集まることで、お母さんはリフレッシュでき、子供たちも楽しめる。沖縄ならではの自然に恵まれた場で、支え合い助け合う環境づくり。美しい海が、與古田さんの暮らしにも安らぎをあたえてくれています。
 

伝統工芸の作家とつくる風鈴

2023年夏、與古田さんのある夢が叶いました。それは、沖縄の伝統工芸作家と一緒につくる風鈴。本体は、與古田さんがつくった琉球ガラス、音を鳴らす部分「舌(ぜつ)」にはやちむん、風を受ける部分には紅型の布。さらに、自身が海でひろったシーグラスを留め具に使い、沖縄のさまざまな魅力が詰まった風鈴を完成させました。
 
琉球ガラスの風鈴

「きっかけは、やちむん工房の体験用の土をお借りして、自分でサンプルの舌を作ってみたこと。やちむんとガラスが出会って、どんな音がするかドキドキだったけど、とてもいい音色になりました。素人の私が作ってもこんなにいい音なら、プロのやちむん作家さんが作った舌を使ったら、どんなに素敵な音になるだろうと。ワクワクしてお願いしたら、そこに紅型作家さんとのご縁も重なって。ずっと沖縄の伝統工芸の作家さんとコラボしたいと考えていたので、思い入れの深い作品となりました」

 沖縄の伝統工芸を集めた風鈴

作り手の思いが重なり、手づくりのぬくもりが伝わる音。沖縄の風が生み出す愛しい音色が、暮らしを豊かに彩ってくれそうです。
 

硝子屋swell

Instagram /
https://www.instagram.com/swell.sumire/?hl=ja

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